還暦から白寿まで、グランドジェネレーションを祝って年中お飾りする、老舗・安藤人形店の新しい提案です。卒寿の色は紫でしたが、パワフルだった母には少しさみしいので真紅を選びました。モダンな中に、染めの色合いなど職人芸が光っています。
元気だった母が、急にぼんやりし始めたのは、仕事をやめてマンションに引っ越してからでした。広い一軒家では、あちこちの雨戸を閉めるだけでも大変。少しでも楽にと移ったマンションですが、利便性の良さと環境の変化は老化を進めてしまったのかもしれません。
老いていく親とどう向き合っていくかは、高齢化社会の課題です。
老いは止められないけれど、うまく付き合っていくには、いくつかのポイントがあるようです。
ひとつは、兆しを見つけたらすぐに動くこと。午前と午後を勘違いしたり、探し物が増えたり、同じ服ばかり着るなどは分かりやすいサインです。
人はやっかいなことには目をそむけがちですが、気になったらすぐに病院に相談すること。認知症は進行性ですが、スピードを遅くすることはできます。
もうひとつ、とても大事なのは笑顔です。叱ったり、怒ってはダメ。
いろんなことを忘れても、喜怒哀楽は敏感に感じ取ります。恐怖は脳の海馬を萎縮させるのだとか。
ポイントは表情です。脳はわずかな笑顔でも認識して、忘れていた感情を取り戻そうとするという研究発表もあります。
目を合わせたり、ジェスチャーをつけたり、作り笑いでいいから褒めて話す。「ニコニコリハビリ」といって学会でも推奨されている方法です。
いつ、どんなときでも笑顔で話すのは難しいことではあるけれど、それも自分へのトレーニング。いまの私が、母にできることです。
毎朝、かわいらしいお人形を見て、母が笑ってくれるとうれしいです。