山形の老舗企業、とみひろグループの記念式典にお招きいただきました。
創業は天正6年、信長が躍動した安土桃山時代です。
着物の販売、レンタルを主流の事業として、2017年度の売上は18億超。
着物をベースにこれだけの歴史を紡ぎ、さらに成長を続けているのは、伝統だけにとらわれず革新を追い求めてきたからです。
そこから見えてくるのは、本気のものづくりでした。
2015年に3000坪の土地を開墾し、桑の木を植えて養蚕をスタート。ゼロからの養蚕は地元でも50年ぶりだったそうです。
自社で生み出した「ジャパンクオリティ」の絹糸を、山形の草木で染色し、オリジナルデザインで着物を作り上げていく。
小売業の範囲を超えてSPA化にも取り組み、自社ブランドの商品を企画開発、製造にも挑んでいます。自社で和裁を行う呉服店は、類を見ないそうです。
同時に京都や新潟など着物産地のメーカーともタッグを組み、世界に向けて豊かな日本文化を発信したいと、意欲的でした。
いま、国内で生産される絹はわずか2%。先人が培ってきた技術と伝統があるのに、その灯火が消えかかっている……。現状にしがみつくだけではなく、着物の未来を開拓しなければと、27年間考え続けた結果が、ゼロからのものづくりだったそうです。
失われつつある技術を若い職人に引き継ぎ、新たな商品を開発しながら育てていく。山形だからできることにこだわり、地元の産業として事業を発展させれば、技術も継承され、若い人たちも生まれた地に根付くことができます。
着物だけにこだわらず、地元の古い蔵を改装して、カフェやレストランなどの新事業も始動。時代をとらえた資産の再構築ですね。
まさに地場の力の蘇りであり、こうした社会貢献の精神がなければ、いまの時代、地元で生き抜いていけません。
糸を紡ぐように、伝統、技術、そして人の縁を紡いでいく。その勇ましい挑戦があったからこそ、440年の歴史があるのだと、感動を覚えました。
現在の代表が23代目、24代目の息子さんと、25代目のお孫さんも控えておられて頼もしい限りです。
伝統と革新を、いかに次の世代へと受け継いでいくのか、これは経営者なら誰もが抱える課題ですが、大いに学ばせていただきました。
自社の力にこだわった挑戦こそが前進なのだと、肝に命じた次第です。